今までの4回で、クリエイティブ系の採用者目線でポートフォリオに関する心構え、作り方、そして面接での伝え方をお話ししました。ここまでの情報で、だいたいのデザインプロダクションや一般企業の制作部門への転職活動に効果があると考えています。
しかし、世の中には様々な企業があります。特にクリエイティブ業界ともなればなおのこと。そこで、最終回の今回は1つ上のポートフォリオについてお話ししましょう。
目次
■物足りない?
ここまでは、A4クリアフォルダを使用してポートフォリオを制作することを前提に話してきました。
もちろん、これで就活に成功できると考えているのでそのようにお伝えしましたが、、、中には物足りなさを感じる方もいるでしょう。「大本命の大手企業の選考に備えて、もっとインパクトのある物を作りたい!」そんな方はぜひ挑戦してください。
(過去にあった、インパクトのある作品)
a.広げると作者の等身大ポスターになる
b.ポートフォリオ全体が毛皮で覆われている
c.キャラクターが道案内をしてページを進む
d.自分の幼少時代からの歴史になっている
e.飛び出す絵本
…などなど。
どれも良いでしょう。しかし、どれもダメな可能性もあります。
■『意味』のある表現をする
表現、ページ構成、ともに自由に発想して良いのですが、重要なのは奇をてらうことではなく、何らかの『意味』が必要です。
(例えば)
a:広げると作者の等身大ポスターになる=等身大の自分を知って欲しい
(もっと単純に)
b:ポートフォリオ全体が毛皮で覆われている=寒がりな自分を表現
○【重要】ポートフォリオのコンセプト
上述の『意味』は、ポートフォリオにおけるコンセプトではありません。
やや面倒な話になりますが、重要なことなのでガマンして読んでください。
「b:寒がりな自分を表現」がポートフォリオのコンセプトではおかしな話ですよね。
これは、言い換えれば「『自分』というキャラクター(性質)を伝える」と言ったところでしょうか。
(コンセプトから表現への流れ)
・『自分』というキャラクター(性質)を伝えるには?
↓
・『自分』のキャラクターは、堅苦しくなくカジュアルで気軽である
↓
・ブックカバーで寒がりな自分を表現しよう
↓
・では、毛皮のポートフォリオをしよう
とつながってくると思います。もちろん、もっと色んな表現アイディアがあります。
○まずコンセプトを作る
例えで記載したように、流れは「コンセプトから表現」です。制作ではまずコンセプトを作ります。
基本編のポートフォリオでは、「自分の作品を○○に伝える」「自身の○○なスキルを見せる」など、作品中心で展開されます。
しかし、応用編のポートフォリオでは、このコンセプトが重要です。
自分自身や作品のことばかりではく、応募に関連付けたコンセプトでも構いません。「自分がそこへ入社した場合どうなるのか」、さらにその先「自分は将来何がしたいのか」などです。
1社向けにコンセプトを絞り熱意をアピールすることが重要になります。
(例)
コンセプト:将来を含めたデザイナーとしての自分像
↓
現在までの自分像:小さな頃から絵が好きで学校内のポスター作りもしてきた
+
将来の自分像:独立して自分が率いるデザイン事務所で海外の賞なども獲得
↓
ブックデザイン:架空の「有名デザイン事務所のカタログ」
+
ページ構成:有名デザイナーである自分の幼少時代からの作品史
■型に捉われない
さて、個性を発揮するポートフォリオを作るとなったら一度作った基本型を壊すことを恐れずに取り組みましょう。型に捉われずに柔軟に大胆に発想してください。
だからと言って「変えるために変える」にならないでください。
徹底的に壊さないと伝わらない場合もあれば、エッセンスを加える程度の変更で済む場合もあるでしょう。あくまで重視すべきはコンセプトです。制作を開始した後も、何度もさかのぼって効果的な表現を考えてください。
○個性、個性、個性
「珍しいけど本人の人間性、趣味、作品、どれとも合っていない」。
これではただの借り物になってしまいます。どこかで見たような借り物でしたら、シンプルな基本的ポートフォリオの方が良いでしょう。繰り返しになりますが、奇をてらうことが目的ではありません。
○自分自身の棚卸し
基本編ポートフォリオの作り方では「作品の棚卸し」からスタートするようにお話ししました。しかし、応用編のポートフォリオでは「自分自身の棚卸し」が必要かもしれません。自分自身を語るポートフォリオです。
自己アピールを兼ねていると考えると分かりやすいでしょうか。
(応用編でも忘れてはならない基本編)
・悪いポートフォリオ
・受験企業とのマッチング
・お気に入りの作品は前へ
・初見で伝わるのか?
・「本当はもっと、、、」
■デジタルデバイスの時の注意
作品面接の時には紙のポートフォリオではなく、デジタルデバイスによるポートフォリオでも良いでしょう。Web系企業の中にはむしろそれを好むところもあるようです。
ただし、この場合も第1回の心構えは忘れないようにしてください。
「さぁ、始めてください」と声をかけられたらすぐにスタートできるように準備して会場入りしましょう。PCでもタブレットでもあらかじめ起動してポートフォリオページを開いておくようにしてください。
次のページへ進むのにも手間取らないように練習しておきましょう。
■海外、外資系
最後に、海外企業へ見せるポートフォリオについて触れておきます。
あくまで私見ですが、欧米の企業や外資系企業では、今回お話しした「個性重視」のスタイルが好まれる傾向があります。
過去の作品をキレイにまとめたポートフォリオより、パッと見た時にその人らしさが現れているもの、それ自体が作品として存在するものが評価されやすいと思います。
5回に渡り、クリエイティブ業界の就活に必須なポートフォリオについてお話ししました。
第1回の冒頭に書いてある通り、ポートフォリオには「これが正解!」はありません。しかし「受け入れ側の視点」と「応募者側の気質」からまとめた筆者の考え方はきっと効果を発揮してくれると思います。
転職=人生。クリエイターとしての人生を送るため、ぜひとも良いポートフォリオ作りに挑んで欲しいと思います。
このシリーズを読んでくださった方々の良い転職をお祈りいたします。
【ポートフォリオの作り方 全5回連載】
第1回【ポートフォリオの作り方】まず始めに
第2回【ポートフォリオの作り方】基本編(上)
第3回【ポートフォリオの作り方】基本編(下)
第4回【ポートフォリオの作り方】見せ方・伝え方
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