デザイン業務をすべきは「朝」?「夜」? 睡眠を知れば制作効率はUPする!

「クリエイターが仕事をする上で『朝と夜』どちらがいいか」。これは、作業を効率よく進めたいクリエイターにとって、大きな疑問のひとつです。朝型・夜型か、どちらの生活を送っていたとしてもそれが必ずしも自分に合っているかどうかの判断にはなりません。今回は、編集者としてビジネス情報誌や女性誌で「睡眠に関する企画」を立案、識者への取材、執筆にあたった筆者が、睡眠における「朝型・夜型の診断」についてご紹介します。

 

生活パターンと睡眠の傾向

NHK放送文化研究所が行っている国民生活時間調査(2015年版)によると、日本人の平均睡眠時間は平日7時間15分。
さらに睡眠を時刻別に見ると、朝、半数以上の人が6時30分までに起床し、同様に、半数以上の人は23時までに就寝となっています(平日の場合)。
意外とみんな寝るのは早いんだなと感じる方も多いのではと思いますが、これを日本人の平均とすると、6時30分以前の起床タイプは朝型寄り、23時以降も起きている人は夜型寄りといえます。

ただし、勤務体制や子育てなど諸々の事情により、自身の希望と反した生活を余儀なくされている場合も多いのではないでしょうか。
「毎朝5時半起床だが頭もボーっとし、半分寝ぼけながら朝支度をする」ような人は、朝に集中力を伴う作業は向かないでしょう。一方「早起きは健康的であるが、ベッドに入っても寝付けず、時間を無駄にしている」という人は、むしろ起きていた方がマシかもしれません。

 

体内時計と「夜の覚醒」との関係

クリエイターが「朝型・夜型」を基準に「効率よい作業」を考える際、まず知識として持っておきたいのが、ヒトは「体内の概日時間」に大きな影響を受けているということです。一般的には「体内時計」という言葉で表現されているものです。

世界的な睡眠研究の権威でもあるイギリスの「睡眠センター」によると、体内時計は体温を指針としているそうで、2時から6時は体温がもっとも低く、18時から20時は高くなります。体温が低い=覚醒状態も低いということです。

さらに眠気から覚醒までを10段階で評価、「覚醒の24時間変化(下図参照)」を見ると、7時までは眠気を伴いながら9時ごろ「レベル8の覚醒」が始まり14時くらいまで継続。その後16時あたりまで下降し、17時以降ぐらいから上昇し21時半くらいまで「レベル10の強い覚醒」が起こり、23時までに「レベル5」まで緩やかに下降します。

この概日リズム(サーガディアン・リズム)は基本安定しており、実は、ヒトは夕方以降22時ごろまで日中以上の覚醒状態があるのです。
ですから「夕方、絶望的に眠かったのに、夜、急に目が覚めてきた」という経験がある人も多いでしょう。ヒトは、生物的に「夕方から夜にかけ覚醒する時間がある」わけですから、当然ともいえます。

「覚醒=頭が冴えている」ということ。つまり、集中力を伴う作業向きの時間といえます。
また、夜は日中に比べ騒音も少なく、静かな環境は「気持ちを内に向けさせる」ので、集中力はもとより想像力も高まるのでクリエイターにはメリットでしょう。
その上、取引先などからの連絡やメールなどの返信といった「差し込み業務」も格段に減り、自分のスケジュール通りに物事も進めやすくなります。「徹夜の悪循環は絶対に直さなければいけない」と深刻に考えすぎず、自分が気持ちいいスタイルであることが重要です。

 

あなたは「朝型?それとも夜型?」チェックリスト

では、自分が仕事をする上で「朝型・夜型」かというのは、どのようにすればわかるでしょうか。

先に紹介したイギリス睡眠研究センター所長であり、「睡眠研究のバイブルと言われる『Sleep Faring』」の著者である、ジム・ホーン氏(米国ラフバラ大学精神生理学教授)がオフロ・エストベリ博士と共同開発した「朝型・夜型アンケート」というものがあります。これは、現在も世界中の睡眠研究者たちが使用していますが、詳細項目で「自分で」朝型・夜型かを診断するものです。

また、2016年に、オンラインの学術的ジャーナル「Nature Communications」に、DNA型から判断する「朝型・夜型」の調査結果が発表され、日本のWeb上でも「遺伝子によるもの」と話題になりました。しかし、これも被験者がオンラインで「自己申告」したものがベースになっています。
つまり、どちらなのかは「自分ではないとわからない」ということ。

以下、ジム・ホーン教授の「朝型・夜型アンケート(10項目)」を挙げました(簡易版)。早速、下の質問に答えてみてください。

1. 起床後30分間の目覚め具合は?
A)とても眠い B)かなり眠い C)わりに目覚めている D)すごく目覚めている

2. 起床後30分間の食欲は?
A)まったくない B)あまりない C)わりにある D)すごくある

3. 翌日に予定がない場合、いつもより寝る時間を遅くしますか?
A)2時間以上遅くする B)1~2時間遅くする C)1時間以内程度遅くする D)しない

4. 友達から午前7時から8時のフィットネスに誘われました。あなたはどのくらい続けられそうですか?
A)続けられない、無理 B)けっこう難しい C)たぶん続けられる D)絶対続けられる

5. あなたは何時になると眠くなりますか?
A)午前2時から3時 B)午前12時45分から2時 C)午後10時15分から午前12時45分 D)午後9時から10時15分 E)午後8時から9時

6. 23時に寝る場合、あなたはどれくらい眠いですか?
A)まったく眠くない B)あまり眠くない C)わりと眠い D)すごく眠い

7. 午前4時から6時まで起きていなければなりませんが、次の日は予定がありません。その時あなたは、
A)6時まで寝ない B)午前4時まで仮眠し、午前6時以降に眠る C)午前4時まで眠り、午前6時以降に仮眠する D)午前4時まで眠り午前6時以降は起きている

8. 1日5時間仕事をします。仕事時間を自由に選べる場合、どの時間帯から始めますか?
A)午前0時から、あるいは午後16時から B)午後2時から C)午前10時から D)午前8時から  E)午前3時から

9. 体調がベストなのは、どの時間帯ですか?
A)午前0時から5時、ないし午後10時から午前0時 B)午後5時から午後10時 C)午前9時から午前11時 D)午前5時から午前9時

10. 「朝型・夜型」か尋ねられたら、どれにあてはまりますか?
A)明らかに夜型 B)朝型というよりむしろ夜型 C)夜型というよりむしろ朝型 D)明らかに朝型

いかがでしたでしょうか。
文字数上内容を要約していますが、おおよその診断ができるはずです。

1から5と、7・8・9は、それぞれ『Aが1点、Bが2点、Cが3点、Dが4点、Eが5点』として計算、6と10だけ『Aが0点、Bが2点、Cが4点、Dが6点』と配点が異なります。
上記で点数を集計し、最大52点に対し、点数が低いほど夜型です。

なお、この質問も自己申告です。
回答しながら感じた方も多いと思いますが、そもそも、多くの方が自分は「朝型」なのか「夜型」なのかをなんとなく認識していると思います。そして、大概、それは合っていることがほとんどです。

もう少し具体的に考えるのであれば、何か作業があるとき「朝・夜」のどちらが集中できるかを思い返して見ましょう。仕事だけでなく、例えば部屋の片づけや掃除などの家事はどうでしょうか。
朝が集中できると思った人は「朝型作業向き」、本来は日中やりたい人でも、家事や育児などの生活事情で「今は夜がよい」という人は現時点で、「夜型作業向き」ということも言えるのです。

 

まとめ

繰り返しになりますが「朝型・夜型」のどちらが向いているかは、自己分析が基軸になってきます。
効率よくこなすためにも、この機会に自分の睡眠と作業効率の関係性について考えて見てはいかがでしょうか。

参考:2015年国民時間調査報告書(NHK放送文化研究所)

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