今回の派遣法改正により、いくつかの「派遣先の義務」が追加されました。
本解説では、派遣先に課される「抵触日」と「募集情報の提供義務」を解説します。
派遣スタッフを受け入れていて「派遣先」となっている企業の方はぜひご一読ください。
■「抵触日」とは?
第二回の解説にて「同一の派遣スタッフは原則3年が上限」と解説しました。
派遣スタッフが満3年を迎えた次の日=派遣就業ができなくなる日を「抵触日」と言います。
(派遣スタッフの「抵触日」は派遣元が管理します)
これと同じように、派遣先(派遣スタッフを受け入れている企業)にも、派遣先が管理すべき「抵触日」が存在します。
派遣スタッフが就業できなくなるのと同じく、「派遣先の抵触日」を迎えると、派遣スタッフの受け入れが一切できなくなってしまいます。
では、どのような「抵触日」なのでしょうか。
○この「抵触日」は事業所単位での扱いとなります
2015年9月31日以降に事業所に派遣スタッフを受け入れた日が起算日。
そして、そこから満3年を超えた日が「抵触日」となります。
また、派遣スタッフが変更した際や、異なる職種の業務でも、期間は通算して考えます。
それでは、「派遣先の抵触日」である満3年後は、一切派遣スタッフの受け入れができなくなってしまうのでしょうか。
実はこの「抵触日」は更新をすることができます。
一定の手続きを経て「抵触日」が延長されれば、間を空けずに、改めて3年間は派遣スタッフの受け入れが可能になります。
○「意見聴取」を行う
「抵触日」の1ヶ月前までに、過半数労働組合(過半数労働組合が存在しない場合は、過半数代表)に意見聴取をすればOKです。
尚、延長できる回数には制限はありません。また、1回あたりでの延長は最大で3年までとなります。
具体的な「意見聴取」の方法ですが、細かいルールがあります。
・過半数労働組合
従業員の過半数が参加する労働組合です。
「抵触日」は事業所単位の概念ですが、この過半数労働組合が全事業所に渡る労働組合であっても、過半数労働組合への意見聴取となります。
また、過半数代表がいる場合でも、過半数労働組合への聴取が優先されます。
・過半数代表
従業員の過半数を代表する従業員の方です。投票・挙手など民主的な方法で選出された方であることが条件になります。
また、管理職以上の方は該当しない他、社長などからの指名によって選出された方もNGです。
・書面で通知する
下記2点を明記した書類にて通知し、意見聴取する必要があります。
・事業所名
・延長する期間(最長3年)
また、部署ごとの派遣スタッフの人数や期間など、参考になる資料・情報も提供するようにすることが求められています。
○意見聴取後の措置
意見聴取後は、下記4点を書類にし保管をしなければいけません。
・過半数労働組合の名称、もしくは過半数代表の方の氏名
・上記の書面で通知した日付と、通知した内容
・意見聴取を行った日付と、意見の内容
・意見聴取後に延長期間を変更した場合、その延長期間
尚、この書類は、延長後の期間終了から3年間、保存する義務があります。
○意見聴取の際に、反対・異議などの意見があった場合
この「抵触日の延長」のために必要なのは、あくまで「意見聴取」であり「同意」ではありません。
ですので、反対・異議などがあった場合でも更新自体は可能です。
ただ、反対・異議があった際は、以下の事項をしなければいけません。
・延長の理由の説明
・反対・異議への対応方針の説明
(いずれも事業所の労働者全員に周知が必要)
・説明を行った日付と内容を書面化し、延長後の期間終了から3年間保存する
また、この「抵触日」については、派遣先へ通知をしなければいけません。
「抵触日の通知」については、次回の第四回にて解説をします。
■「募集情報の提供義務」とは?
2012年の改正時は努力義務となっていた事項ですが、2015年の改正からは義務化されました。
具体的には、下記のようになります。
・事業所単位で、同一の派遣スタッフが就業して1年以上経過しており、
・その事業所で「正社員」の募集をする場合、
・その派遣スタッフに対し、正社員の募集を行っていることを周知しなければいけない
周知の方法は、事業所内のわかるところに掲示する、派遣元を通じて周知するなど、方法の指定はありません。
また、明記している応募資格に該当しない場合は告知は不要です。
※年齢による制限は、一部を除き禁止されていますので、想定年齢との相違は「告知不要」に該当しません
※あくまでも告知義務ですので、該当派遣スタッフが応募した際は、通常の選考フローを実施することが可能です
もう1つ、新しく追加された「募集情報の提供義務」として、下記が義務付けられてます。
・同一組織単位で、継続して3年間就業する見込の派遣スタッフ(次回更新で満3年を迎える方)について、
・派遣元から、その派遣スタッフを直接雇用するよう依頼があり、
・その事業所内で社員募集を行う際
尚、1年以上経過している派遣スタッフへの周知は「正社員の募集」に限られていますが、3年間就業の方については正社員ではない雇用形態(契約社員やアルバイトなど)についても告知する義務が発生します。
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次回は、「抵触日」をもう少し深掘りし、「抵触日の通知」について解説したいと思います。
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